ちょんな
「ちょんな」とは、木を削る大工道具として
古くから使われている手斧の事です。


<平成19年5月>

 先日、スポーツジャーナリストの二宮清純さんの講演を聞く機会がありました。

 タイトルは「勝つリーダー 負けるリーダー」。二宮さんが長年プロスポーツの世界を取材してきて、超一流の勝負師やリーダーたちの舞台裏を間近にみてきての話だったので、非常に面白く、説得力がありました。
 講演の結論は、「勝つ人間に必要な唯一絶対のもの それは“鉄の意思”である」ということ。そして事例として紹介してくれたのがJリーグ初代チェアマン川渕三郎氏のことでした。

 Jリーグつまりサッカーがプロ化される以前、野球の巨人戦が5万人、ラグビーの早明戦が6万人の観客を集める中で、サッカーは1000人以上集まればいいほう、という状態でした。その中で川渕さんは、スポーツによる地域振興などを盛り込んだ「Jリーグ100年構想」というとてつもなく高い理念を掲げてJリーグを立ち上げようとしていた訳ですが、当然の如く反対勢力が立ちはだかったそうです。Jリーグを認可するかしないかを決める大詰めの会議の席で、反対勢力が「サッカーのプロ化など時期早尚」「100年構想などという前例のないことが成功するはずがない」と発言し、このままでは否決されて終わってしまうという空気の中で、川渕さんは立ち上がって次のように言い放ったそうです。
 「時期早尚という人間は100年経ってもそう言っている。前例がないという人間は200年経ってもそう言っている」
 「時期早尚という人間は自分にやる気がないのをごまかしているだけだ。前例がないという人間は自分にアイデアがないのをごまかしているだけだ」
 「やる気がなく仕事ができない人間は、できない理由を並べ立てる。仕事なんて最初はできないのが当たり前。できないことにチャレンジして、できるようにするのが仕事だ」
 川渕さんの“鉄の意志”を表現したこの発言で会議の空気が変わり、結局Jリーグは可決されて、今日のプロサッカーの隆盛、日本代表のワールドカップ3大会連続出場、そしてスポーツを通じた地域振興につながっていったそうであります。
 おそらく川渕さんも、その時点での自信や勝算は確固としたものではなかったと思います。あったのは「何としてもサッカーのプロ化を成し遂げ、Jリーグ100年構想を押し進めるのだ」という“鉄の意思”だけだったと思います。

 不況にあえいでいる我々建設業ですが、公共工事削減や入札制度改革などを嘆く以前に、トップが“鉄の意思”を持ってそれそれの企業を経営していかなくてはいけない、と思わされる二宮清純さんの講演会でありました。

<H.I> 

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