ちょんな
「ちょんな」とは、木を削る大工道具として
古くから使われている手斧の事です。


<平成22年10月 PartK>

コップの大きさ
 大阪西成の格安立飲み居酒屋「難波屋」でビールをたのんだところ、メーカーがおまけでくれるような、小さめのビールグラスが出された。こちらは呑むペースが速く、グラスが小さいと何度も注がなくてはいけないので、面倒くさい。チューハイを頼んだ隣のお客には、大き目のコップにすりきりまで入った焼酎と氷が詰まった縦長のタンブラー、それに炭酸水がついている。一杯300円のチューハイにしては、量といいサービスの仕方といい、お値打ちの感じがする。
 カウンターの上に焼酎のコップがいくつも並べられている。手に取ると「大阪府小売酒販組合」の文字がプリントされた、厚手でしっかりとしたコップである。形は普通のビールグラス、アサヒとかキリンとかあるいはサッポロの星のマークが描かれた、おなじみのものと同じだが、少し大きい。一合以上の容量がありそうである。重めの手取りもしっくりとくる。二本目のビールを注文して、コップは酒販組合のものに替えてもらった。こんな注文をつけるお客なんていないようで、店員のお兄ちゃんは訝しげな表情だ。呑んでみるとまことに具合がいい。重さもちょうどいいし、口に当たる縁が、先ほどのビールグラスに比べると厚みがあって呑みやすい。これはいいコップだ、欲しい。
 ビールを三本呑んだところでお勘定にしてもらう。三本呑んでも千円ぐらいだ。ついでに「このコップ分けてくれないかな。」お兄ちゃん「えー、どうしょかなぁー。」「うーん。」と悩んでいる。くれといっているわけではないのだから、割ってしまったことにして、こちらに一個まわしてくれればいいのに。まじめな人だ。ぐずぐずしていると、同僚のおばさんが助け舟を出してくれた。「どうせただでもらったものやんか、くれてやりいな。」この一言でコップは我が物となった。ありがたく、うれしい。
 「ただでもらった」といっていたので、酒販組合に加盟している酒屋さんがお得意さんに配っているものらしい。自宅に帰って容量を量ったところ、おどろいたことに200ccある。一合より多いのだ。外で飲むことが多い人ならピンとくると思うが、一杯が一合より多い飲み屋はまずないのだ。
 東京の下町の居酒屋は焼酎を出すときには「角七勺グラス」を使うのがお決まりである。七勺の名前の通り、容量は126cc。チューハイのときにも、角七勺グラス一杯の焼酎と炭酸水、氷の入ったタンブラーのセットで出てくることが多い、それで350円から400円だ。それに比べれば大阪のコップの容量200ccというのは、上を向いて笑えるぐらいにありがたい。「角七勺グラス」もいい形をして魅力のあるガラスの製品だが、中身が寂しい。このグラスで焼酎を出したら、西成では暴動が起きるかもしれない。



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