2005年12月
今自分が住んでいる所の建物強度が足りない、などと言われたら、どんな気持ちだろう。
「一生懸命いろいろな物件を比較して、時間を掛けて決めた自分の住まいが強度不足?とんでもない。どうすればいいの?
売った人の責任は、どうなっているの?そうだ、造った人だっているじゃない。造った人の責任は、どうなっているの?
確認申請、というのもあるじゃない。あれは、建物を審査するんでしょう。審査するって、こういう不正をチェックすることでしょう?
よく聞けば、設計者は姉歯さんとは違うみたい。ということは、姉歯さん以外に設計者がいる、ということなんだ。では姉歯さんは一体どう関わっているの?
とにかく専門的なことはわからないけど、私は何も悪いことしている訳じゃない。きっと何か救済処置がある筈よ。そして、悪い事した人達が、罰せられる筈よ。」
メディアに流される程度の情報しか知らないけれど、不思議なのは、強度計算を偽装した本人の姉歯さんが未だに逮捕されていない。姉歯さん以外の関係者も逮捕されてない。
考えてみると、確かに姉歯さん以外の責任の所在は特定し難いかもしれない。姉歯氏の構造計算書を受け取った設計者もその確認審査をした人も、恐らく構造計算の概略は知っていても、計算はできないだろう。構造計算できない人に判断させることが最も問題だが、設計に関わる全ての人にその能力を求めることは無理がある。
翻って私達自身のことを考えても、果たして今作っているものがしっかりした強度を持っているかどうか、を問われても答えられない。正直、わからない。又、構造計算書まで設計図書に含まれることは、殆んどない。
要するに、ブラックボックスみたいな物だ。箱の形は見えるから、それなりに判断出来るけれど、中身はまるでわからない。こういうものです、と言われれば、信じるしかない。でもでも、廻りを見ると、JIS製品、宅地認定品、土質の特定、地耐力の算定、荷重の算定等々何と多くのブラックボックスがあることか。これら全てのブラックボックスについて何らかの形でチェックしなければならないとしたら、いつ?どの段階で?誰が?行うのか。今回の問題を突き詰めると、建設業界の激震を引き起こすかもしれない。