2022年12月
身近な遺跡
どこに行っても、仕事の合間にきょろきょろと歴史的なものを探してしまう性格で(もちろん仕事が優先ですが)農道舗装を施工した現場近くの路肩に宇志瓦塔遺跡と書いた看板があり20数年前に尋ねた事がありました。その時には、遺跡の看板と土に埋もれた石段などがあっただけのようであまり印象に残っていなかった遺跡です。
場所は、オレンジロードと宇志から登ってくる農道の交差点から徒歩15分ぐらいのミカン畑に囲まれ浜名湖が望めるロケーション良い場所にあり、今は、瓦製実物大模型が設置されています。
そんな地味な遺跡ですが、建築技術を理解していなければ作れないのではないかと思いとりあげてみました。
瓦塔とは、宇志瓦塔遺跡保存会の説明文によると、瓦製の仏塔のことで奈良時代より平安前期にかけて経済的事由等により木造建造物の代わりに建立された瓦製の小塔を言う。当時の瓦塔で現存するものはなく東京都東村山と三ケ日宇志のものが、発見された破片により復元され、博物館に所蔵展示されているに過ぎないとされ、宇志の瓦塔は唯一当時の状況が明らかなものであり、その第一層四面の扉には仏像が浮き彫りにされていてその周りには保護柵まで持つ精巧なものとして奈良国立博物館館長に嘆賞され、実物は奈良国立博物館に所蔵展示されています。
平成30年に浜松市地域遺産センター(旧引佐町役場)に実物の里帰りがあり、その時に宇志の瓦塔を思い出し見学に行きましたが五重塔のバランスや屋根のそり軒の垂木の細部までしっかりと製作されているのを見て感銘を受けました。
1200年前に五重塔の精巧模型が粘土細工とは言え製作できるということはかなりの建築技術を持っていないとできないと思います。奈良の都にいた技術者を三ケ日に引抜いてきて製作したのかなとも、古代に想いを馳せば楽しくなります。瓦塔遺跡の近くには摩訶耶寺があり歴史的価値のあるものとして、庭園と国指定重要文化財の彫刻千手観音立像と不動明王立像がありこの周辺は、古代ロマンがあふれています。瓦塔は、文化財としては町指定ですが、国立博物館に凛として展示されている瓦塔に技術者として仏像より魅力を感じてしまいます。遺跡は地元の方々によりよく整備されています、ミカン収穫時期に訪れるのは気が引けますが、展望もいい所ですぜひ訪れてみてください。
<T.K>